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2024.8.26

マンションの大規模修繕とは?~工事に必要な基礎知識~

マンションの大規模修繕工事とはどのようなものなのか

マンションの管理組合の大仕事といえば、なんといっても大規模修繕工事。世帯数の少ないマンションでも、大きなお金が動く大規模修繕には課題も悩みもつきものです。

最近では外部管理者方式(第三者管理方式)を採用して、区分所有者に代わって管理組合の運営自体を外部委託するケースも増えていますが、そもそも大規模修繕とは、どのようなものを指すのでしょうか。

マンション大規模修繕の定義

国土交通省では大規模修繕について、下記のように定義しています。

修繕とは、経年劣化した建築物の部分を、既存のものと概ね同じ位置に概ね同じ 材料、形状、寸法のものを用いて原状回復を図ることをいいます。 ・大規模の修繕とは、修繕する建築物の部分のうち、主要構造部(壁、柱、床、は り、屋根又は階段)の一種以上を、過半(1/2超)にわたり修繕することをいいます。

引用元:国土交通省「大規模の修繕」法律上の手続きと補助・融資等の制度<参考1> マンション改修に関する建築基準関係規定上の手続き(https://www.mlit.go.jp/common/001064904.pdf

国土交通省が作成したガイドラインによれば、大規模修繕は

  • マンションの快適な居住環境を確保、維持するためにおこなう修繕工事
  • マンションの資産価値を維持するために行う修繕工事
  • 時代のニーズに合わせ建物や設備の性能向上を図るための改修工事
  • 修繕工事のうち大規模な工事内容で工事費用が高額で長期間にわたる工事であること

と説明されています。

参照元:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改訂) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747006.pdf

大規模な修繕工事には高額な費用がかかることから、国交省からは「マンション大規模修繕工事の発注等の適正化について」という通知がマンション管理センターや管理組合連合会などに出ています。

この通知の中で、大規模修繕工事を実施することはマンションの維持管理に重要であること、事業者の選定には意思決定の透明性を確保し、利益相反が起こらないよう適正におこなわれる必要があると明記されています。

参照元:国土交通省「大規模の修繕」法律上の手続きと補助・融資等の制度<参考1> マンション改修に関する建築基準関係規定上の手続き(https://www.mlit.go.jp/common/001064904.pdf)
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マンションに大規模修繕工事が必要な理由

それではなぜ、マンションには大規模修繕工事が必要なのでしょうか。改めて確認しておきます。

年間10万戸の新築マンションが供給されているといわれ、住宅取得者の半数以上がマンションを選択しているといわれています。とくに首都圏では、マンション居住者のうちその6割がマンションを“終の棲家”と考えているといいます。

長年にわたって快適で住みやすい居住環境を維持するためには、経年劣化するマンションのメンテナンスや修繕は不可欠です。また不動産としての資産価値を下げずに維持していくためには、「長期修繕計画」といわれる大規模修繕工事のプランに沿って、適切な時期に適切な修繕工事をしていかねばなりません。

国土交通省が2021年に改定した「長期修繕計画作成ガイドライン」によれば、30年以上の期間を想定した長期修繕を計画することを前提とし、さらに5年ごとにその長期修繕計画を見直す必要がある、としています。

近年ではマンション購入時にある程度まとまった金額で修繕積立基金を支払うケースもありますが、毎月区分所有者が修繕積立金を払っていくというのが一般的です。この修繕積立金を原資に10数年に一度、大規模修繕がおこなわれます。

マンションの大規模修繕の前提条件として、あらかじめ「長期修繕計画」を作成し、この計画に沿って修繕積立金を設定して、管理組合が区分所有者から徴収していく必要があります。しかし実際には「長期修繕計画」のないマンションなども存在し、大規模修繕工事の資金が不足するというケースも少なくない、というのが実情です。

参照元:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」(令和6年6月改訂)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001747006.pdf
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大規模修繕に不可欠な3つの前提条件

この記事を読んでいる人の中には、大規模修繕の計画見直しや業者の変更、資金繰りなどの課題や悩みを抱えているという人もいると思います。

そこで最低限認識しておきたいのは、以下の3つのポイントです。

どのような目的で大規模修繕の工事をおこなうのかを明確にする

大規模修繕の目的として挙げられるのは、建物全体の安全性を確保することや設備などの不具合の改善、マンション自体の資産価値を下げないことなどが考えられます。専門家による検査を経て、なにを優先して工事をすべきかなど、管理組合の組合員のコンセンサスを得て計画を立てることが重要です。

管理組合に属する組合員の合意を得て進める

大規模修繕は区分所有者である組合員の合意を得てから進めることを大前提にします。マンションの資産価値を維持して安全性も担保するという目的が同じでも、個々の組合員では考え方も異なります。十分な検討と協議をおこなったうえで、決定事項はその都度周知していきます。

大規模修繕工事の費用を確保する

通常は「長期修繕計画書」に基づいて算出された修繕積立金を原資に大規模修繕工事をおこないます。しかし実際には、物価や資材、人件費の高騰などが要因で、修繕積立金だけでは不足することが少なくありません。そのような場合は追加で組合員から徴収するか、お金を借りるなどして工事費用を確保する必要があります。

参照元:一般社団法人マンション大規模修繕協議会「マンション大規模修繕の流れ」(https://www.renovaters.net/nagare.html)
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マンションの大規模修繕工事の内容と流れ

マンションの大規模修繕工事は、平均すると12年から15年程度の周期でおこないます。マンションの築年数にもよりますが、外壁やタイルなど劣化が目立つ箇所や塗装の剥げているところの修繕、防水工事などが挙げられます。

事前に長期修繕計画がしっかり立てられている場合は、その計画に沿って工事の準備を進め、区分所有者などへの説明会なども実施して、組合員の理解を得たうえで、大規模修繕工事に着手することになります。

マンションの状況によって多少の違いはありますが、以下のような工事内容と工事の流れが想定されます(当社の場合)。

  1. 仮設工事(足場の設置)
  2. 下地調査
  3. シールの補修
  4. 壁面補修
  5. 洗浄
  6. 塗装工事
  7. 防水工事
  8. 長尺シートの貼り込み
  9. 検査
  10. 居住者へのアンケートおよび手直し
  11. 解体前検査
  12. 足場解体
  13. 工事完了
  14. アフターケア

たとえば仮設工事では、足場や周囲を覆うメッシュシートを設置するだけでなく、資材置き場や工事期間中の作業員事務所を置くなど、大規模修繕期間中はさまざまな作業がおこなわれます。ひとつひとつマンションの住民や管理者にていねいに説明しながら、安全性を第一に工事を進めていきます。

また修繕工事に関する住民へのアンケートで手直しが必要になった場合は、いくつかの対応方法を提案したうえで、ご要望に応えるようにします。

次の大規模修繕まで一定の期間があきますが、工事が終わって引き渡したのちに不安がないように、弊社が責任をもって1年目と2年目、5年目にも定期点検(アフターサービス)をおこないます。

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マンションの大規模修繕工事の周期(回数)

マンションの大規模修繕工事の周期については、12~15年くらいの周期でおこなうのが一般的です。建築基準法で、「築後10年を経過した外壁がタイル貼りなどのマンションは、3年以内に外壁の全面打診調査を行う必要がある」と定められていることから、12年程度で修繕工事をすることが多いようです。

国土交通省が令和3年に実施したマンション大規模修繕工事に関する実態調査では、以下のような調査結果が出ています。

大規模修繕工事の回数と築年数 引用元:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001619430.pdf)

このグラフでは、「大規模修繕工事は工事回数1回目は築15年以下、2回目は築26~30年、3回目は築41年以上で実施されている割合が最も高い」と明記されています。

マンション大規模修繕工事の平均修繕周期では「13年」が最も多く、次いで「12年」「14年」「15年」となっており、全体の約7割が12~15年周期で大規模修繕工事をおこなっていることがわかっています。

マンションの外装や機能性、付帯設備などの違いによって差異はありますが、大規模修繕の周期の目安にはなると思います。

参照元:一般社団法人住宅あんしん検査「マンションの大規模修繕工事はどれくらいの周期で必要?」(https://www.j-anshin.co.jp/column/daikibo/a16)
参照元:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001619430.pdf)
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マンションの大規模修繕工事にかかる費用の相場

マンションの築年数や建物の大きさなどによって工事に係る費用は大きく異なるため、相場というかたちで算出しにくいというのが実情です。しかし、「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」で工事費用の調査をしたところ、以下のようなデータが取れています。

大規模修繕工事の回数と工事金額 引用元:令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査【国土交通省ホームページ】https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001619430.pdf

工事回数別に集計した工事金額は、1回目が「4,000~6,000万円」の割合が多く、2回目は「6,000~8,000万円」、3回目以上は「6,000~8,000万円」と「10,000~15,000万円」の割合がそれぞれ最も高いことがわかります。

なお一戸あたり工事金額を大規模修繕工事の回数ごとに見てみると、1回目の工事が151.6万円、2 回目が112.4万円、3回目以上が106.1万円というデータが出ています。

ただ実際には工事を請け負う会社によって工事費用は大きく異なりますし、下請けや孫請けに工事を依頼すればそれだけコストがかかってしまいます。

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マンションの大規模修繕工事はどこに依頼すればいい?

マンションの大規模修繕はこの会社に依頼する、と決まっていとしても、本当にその会社でいいのか、もっと安く、短い期間で対応してくれる会社はないのか、と悩んでいる人もいるかもしれません。かといって、いったいどこに工事を依頼すればいいのか、各社ホームページを見ただけではわからないものです。大規模修繕工事ともなれば、かなり大掛かりな工事になりますので、依頼先は慎重に選びたいところです。

大規模修繕を依頼する施工会社には、大きく分けて以下の3つのタイプがあります。

マンション管理会社

マンション管理会社とはマンションの維持および管理を専門に行う会社のこと。マンションの開発を担ったデベロッパーの多くは、グループ企業や系列会社にマンション管理会社をもっています。専門知識を持ち合わせない管理組合の役員だけでは負担しきれない業務もあるため、多くの管理組合がこうしたマンション管理会社に業務を委託しています。

大規模修繕専門会社

おもにマンションの大規模修繕を請け負う専門会社です。外壁工事や防水工事の実績を重ねて多くのノウハウをもっている会社が多く、現場経験が豊富でアフターフォローもしっかりしている会社が多い、というのが特徴です。複数の下請け業者に施工を委託する場合もありますが、ワンストップですべての施工ができる専門会社に依頼すれば、効率よく大規模修繕工事をおこなうことができます。

総合建設会社(ゼネコン)

マンションだけでなくビルや公共施設など総合的に手掛けるゼネコンには、多くのスペシャリストが在籍し、さまざまな案件に対応できるという強みとブランド力があります。ただし、大規模修繕工事の施工は、外部の専門工事会社に委託するケースがほとんどです。

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今回は、大規模修繕の定義や周期、相場や依頼先などについてお伝えしてきました。これからもこのコラムでは、大規模修繕工事を知ることで、長年にわたって快適で住みやすい居住環境を維持していくことに繋がる情報をコラムとしてお届けしていきます。

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