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2024.12.26

大規模修繕工事の期間はどれくらい?工事の流れや進め方も解説

大規模修繕工事の期間はマンション規模によって異なる

マンションの大規模修繕工事が大掛かりなものであることは想像できると思いますが、実際に工事をおこなうとしたら、どれくらいの期間がかかるのか気になるところです。

そこでここでは、マンションの大規模修繕工事の期間についてと、大規模修繕工事の進め方について解説していきます。ただしひとことでマンションと言っても、規模や立地などの違いによって大規模修繕工事にかかる期間も変わります。

また、大前提としてここでは実際の工事にかかる期間の目安について説明していますが、大規模修繕工事に取り掛かる前の長期修繕計画の立案やさまざまな準備期間も必要になってきます。

●小規模マンション(総戸数50戸未満)

一般的には総戸数が50戸未満の場合、小規模マンションのグループに属します。着工までにかかる時間を含まず、工事期間だけの目安でいえば、着工から完了まで2~3か月で終わる場合もありますが、3~4か月程度かかるケースもあります。

●中規模マンション(50~100戸程度)

50~100戸程度の中規模マンションの場合、小規模マンションよりも大規模修繕工事にかかる期間が長くなります。建物の規模が大きくなれば、それだけ共用する設備なども増えますし、足場を組むなどの仮設工事にも時間がかかります。

あくまで目安ではありますが、中規模マンションの場合は大規模修繕工事に4~6か月程度の期間がかかります。

●大規模マンション(100戸以上・タワマンなど)

100戸以上の大規模マンションやタワーマンションになると、大規模修繕工事の規模はとても大掛かりなものになります。通常であれば半年から1年くらいの期間が目安になりますが、タワーマンションなどの場合はそれ以上かかる場合もあります。

区分所有者の数が増えれば増えるほど、修繕委員会や理事会で取りまとめた修繕計画や工事内容、デザイン、工事スケジュールなどの合意形成が困難になります。そのため大規模マンションの大規模修繕工事は、早い段階で専門家に委託するかたちで余裕をもって準備を進めていくことが大切です。

●大規模修繕各工事にかかるおおよその期間

大規模修繕工事のうち、おもな工事にはそれぞれどれくらいの期間が必要なのでしょうか。マンションの規模や敷地の広さ、周辺環境などによっても異なります。

ここで、50戸未満の小規模マンションを例にとって代表的な工事の期間に関する目安も見ておきましょう。あくまで目安にはなりますので、足場の組みやすさや、そのマンションの構造、立地などにより期間は変わってきます。

仮設設備の設置・足場の設置【15~20日程度】

外壁塗装や補修をするために必要となるのが、仮設足場の設置です。足場の組み方にはいくつか方法がありますが、「枠組み足場」という、パイプやジョイントで組み上げる足場が一般的です。

ゴンドラやロープを使用する「無足場工法」を選べば大掛かりな足場を組まずに作業ができますが、当該マンションに適した作業方法かどうかは施工会社に確認が必要です。

足場のほかに作業員用の仮設トイレ、資材置き場、現場事務所などの設置をする場合もあります。足場を解体する際にも3~5日程度の期間が必要です。

下地調査・下地補修工事・シーリング工事【2週間~1か月】

足場を組んだ後は、まず外壁に亀裂や塗膜の剥離などがないか、どれくらい傷んでいるかを打診検査などで調査します。

その調査結果に基づき下地補修工事をおこない、シーリング工事(シール補修)もおこないます。外壁タイルに剥離やひび割れなどがある場合は、タイルの部分張替え工事をおこないます。

外壁の傷み具合や外壁材によって、工事の期間にも違いが出てきます。

外壁塗装工事・防水工事【1~3か月】

外壁塗装工事と防水工事は、大規模修繕のなかでもっとも時間がかかる工事です。また天候などの影響を受けやすいため、あらかじめ余裕を持ったスケジュールを組むことが多い工事です。

塗料の飛散防止や高圧洗浄の水が飛び散るのを防ぐため、飛散防止シートを張って作業を進めます。

マンション屋上の防水工事の場合も工法によってかかる期間が変わりますし、天候の影響を受けて工事期間が延びる可能性もあります。

大規模修繕工事の流れと進め方

前項では大規模修繕の各工事にかかる期間の目安について説明しましたが、マンションの大規模修繕という大きなプロジェクト自体がどのような流れで進んでいくのかについても、確認しておきましょう。

1. 大規模修繕工事の体制づくり(修繕委員会など)

大規模修繕工事をおこなう前にまず、修繕委員会などの組織を立ち上げる必要があります。理事会もプロジェクトにかかわりますが、大規模修繕の修繕委員会の設置は必須です。なぜなら、大規模修繕プロジェクトを推進していくのは、区分所有者であるマンション住民自身だからです。

大規模修繕工事の準備から工事がすべて完了するまでの期間、この修繕委員会はすべてに主導的にかかわっていきます。長期修繕計画の確認や具体的な工事内容などを検討してまとめ、理事会や区分所有者との合意形成を図っていきます。

修繕委員会のメンバーには建築の知識や法令に詳しい人を選ぶとよいでしょう。また大規模修繕の専門家にも支援を依頼し、総会で方針を決定します。その後、管理会社やコンサルタントなどのパートナーを選定します。

2. 建物調査・診断

大規模修繕工事の内容を決めるためには、マンションの現状を調査しなければなりません。建物診断業者に建物調査を依頼して、マンションの劣化具合や不具合について調べていきます。

調査には「一次診断」「二次診断」「三次診断」といった段階があります。一次診断がもっとも簡易な外観の目視検査や打診検査、居住者などへの不具合のヒアリングなどをおこないます。二次診断、三次診断に進むかどうかは、マンションの築年数や劣化の度合いにもよります。

3. 基本計画検討

修繕積立金だけで大規模修繕工事の費用がまかなえるのか、借り入れなどが必要となるのかなど、資金面に問題がないかを確認しながら、大規模修繕工事の基本計画を練り上げていきます。

資金計画に問題があれば、長期修繕計画を見直しするなどして、工事内容など具体的な基本計画に落とし込んでいきます。

4. 資金計画・実施設計検討

大規模修繕の実施設計を検討したうえで、実際にその設計で資金面の問題がないかを確認します。仮に資金不足という判断が出た場合は、修繕の実施設計を再度見直し、施工会社に発注する内容や発注金額を決めていきます。

高い費用がかかる大規模修繕工事ですから、この段階でしっかり専門家に確認してもらうなどして、実現可能性の高い修繕の実施設計と資金計画を決めていくことが重要です。

5. 大規模修繕の決定/合意形成

専門家も交えて検討した結果を反映した基本計画および資金計画を作成し、理事会で総会決議をおこないます。必要に応じて規約の改正なども検討します。

この際理事会だけで決定するのではなく、組合員(居住者)に対する周知活動を徹底し、大規模修繕の内容などに関する合意形成を図ったうえで決定していくことが大事です。

また共用部分など居住者全員が使用する場所の修繕などは、十分に理解してもらえるように広報活動などで周知を徹底します。

6. 施工会社の選定

大規模修繕工事をおこなう施工会社の選定をおこないます。理事会などで決定した計画やかけられる費用などをベースに、いくつか施工会社をピックアップしていきます。

施工会社に具体的な工事方法や工事にかかる期間などを提案してもらい、見積もりを出してもらったうえで絞り込んでいくのが理想です。

7. 大規模修繕の決定・工事の準備

工事に入る前の最終段階は、大規模修繕工事の内容の総会決議を経て施工会社と工事請負に関する契約を締結します。

総会決議では大規模修繕工事の期間に関する共有や工事金額の承認などを実施。組合員(区分所有者)に対して工事説明会を開催して、工事に対する理解と協力を求めます。

こうして段階を踏んで大規模修繕工事の準備を完了させ、いよいよ工事に着工します。

8. 大規模修繕工事の実施・着工

ここからは、施工会社や設計監理者など工事を実施する側と、管理組合が連携しながら工事を進めていきます。工事の進捗の共有や問題発生時の対応など、定期的に打ち合わせをしながら工事を進めていくことが大事です。

9. 大規模修繕工事中の管理

工事が着工してからも、管理組合が現場サイドから工事の進捗について報告を受け、作業の遅延や問題が発生していないかなど、管理をしていきます。

外壁塗装工事や防水工事期間中は騒音やにおいの問題、バルコニーなどへの洗濯物干しの制限、バルコニー内の荷物の撤去、サッシ窓の開け閉め制限など、住民生活に多くの影響が出ます。

あらかじめ協力を依頼しているとしても、なかには忘れてしまったり協力をしてくれなかったりする住民もいます。管理組合が重ねて協力を依頼して、円滑に工事が進められるように工事中の管理をしていきます。

10. 大規模修繕工事完了後

工事が完了したら竣工検査を実施して問題なく工事がおこなわれたことを確認し、「竣工図書」を受領します。竣工図書とは、竣工図・検査記録・構造計算書・機器の仕様書・試験成績表・各種伝票・保証書・各種資料などをまとめたもののことです。

また、実際に工事にかかった費用の精算を速やかにおこないます。支払い完了後には、修繕積立金が現行通りでいいのかなど、資金計画を見直す必要があります。完了した修繕の内容を踏まえ、長期修繕計画も見直して現状に則したものにしていきます。

大規模修繕工事後のアフターケアや定期的な検査の有無、工事の保証期間や保証項目などをしっかり確認して、次の大規模修繕工事への備えをおこたらないようにしましょう。

※参照元:住宅金融支援機構「大規模修繕の手引き/大規模修繕工事の進め方」【PDF】

大規模修繕工事の実施時期

ここまでマンションの規模別の工事期間や大規模修繕工事の流れについて説明してきましたが、きちんと修繕して安心して住み続けるためには、修繕にかかる期間をきちんと計画して修繕をする必要があります。

大規模修繕をおこなうベストシーズンは、気候が温暖で湿度も高くない春と秋なのですが、最近では春と秋がなく「夏冬の2季しかない」とも言われています。天候不順に悩まされることが少なくありませんので、工事期間が延びることも想定しなければなりません。

工事を始める前の計画に無理がないか、コンサルタントなどの専門家に細かく相談して、工事に着工するようにしてください。




今回は、大規模修繕工事期間と工事の流れなどについて解説してきました。

これからもみなさまのお役に立てるよう、大規模修繕やマンション管理に関連する専門知識などを解説しながら、マンションの長寿命化につながる大規模修繕や改修、模様替えなどの重要性などをわかりやすいコラムでお届けしてまいります。

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