【大規模修繕】マンションの外壁塗装はなぜ重要なのか
大規模修繕で外壁塗装が重要な理由とは?
マンションの大規模修繕のなかでも、外壁塗装を含む外壁修繕はとても重要な工事のひとつです。外壁塗装をいい加減におこなうと、マンションの資産価値が下がってしまうかもしれません。
ここでは、大規模修繕においてなぜ外壁塗装が大事なのか、説明していきます。まず、大規模修繕で外壁塗装工事をおこなう目的について整理しておきます。
マンション大規模修繕で外壁塗装工事をする目的
大規模修繕工事の種類や内容については「マンションの大規模修繕とは?~工事に必要な基礎知識~」でくわしく説明していますが、改めて外壁塗装の目的について確認しておきたいと思います。
マンションの劣化を抑え寿命を延ばす
新築のマンションでも10年以上経てばあちらこちらにほころびが出るものです。マンション居住者の6割がマンションを“終の棲家”と考えているといわれているなか、20年、30年と長く住み続けるためには、マンションの劣化を抑え耐久性を向上させる必要があります。
劣化が進行して塗膜がはがれていると雨水が建物に侵入しやすくなり、鉄筋の腐食などを引き起こす要因にもなります。外壁塗装工事をおこなうことによって建物を守り、マンションの寿命を延ばすことにつながります。
マンションの性能を回復させる
マンションの外壁の塗装に使用している塗料によって、耐用年数が異なります。外壁塗装の耐用年数とは、最初に塗装をおこなってから何年で塗り替えが必要になるかという指標。15年以上の耐用年数があるフッ素や光触媒などの塗料もありますが、10年未満のものも存在します。
大規模修繕は平均で12~15年周期でおこなわれることが多いので、塗料の素材によっては大規模修繕を前倒しして外壁塗装工事をする必要があるかもしれません。近年の異常気象で高温や紫外線、激しい風雨などの過酷な自然環境による強いストレスが原因で、想定を超える劣化が進んでいる可能性もあるからです。
場合によっては外壁の部材や劣化した設備を修理もしくは交換し、建物全体の性能と機能を部材や設備の劣化した部分を修理または交換し、建物が建設された当時の性能に近づける、もしくは回復させるための工事をおこないます。
居住者および周辺住民の安全性を担保する
外壁にどのような部材を使用しているかによっても異なりますが、築年数を経るうちに外壁の塗膜がはがれて変色したり色褪せしたりするものです。
さらにはタイルや壁材のひび割れや欠損といった状態が認められる場合は、壁材落下による怪我などのリスクも生じます。
このような事故が起こらないように大規模修繕で外壁の修繕をしっかりおこなって、居住者および通行人など周辺住民の安心・安全も担保するようにしなければなりません。
マンションの美観を向上させ資産価値を上げる
マンションは数年住んだら住み替えて、最終的には一軒家を建てるという時代もありましたが、現代ではマンションに対する価値観も変わってきています。
マンションの耐久性を高めて寿命を延ばすと同時に、時代に見合った性能や美観を大規模修繕で補完して、資産価値を上げるというのも大事なミッションのひとつです。
予算に限りはあると思いますが、管理組合組合員や区分所有者のコンセンサスを得たうえで、大規模修繕の工事内容を具体的に検討する際には、「どうすればマンションの資産価値を上げることができるのか」という視点で考えることも大事です。
大規模修繕の外壁塗装ではどのような工事をするのか
それでは実際に外壁塗装に関連する工事にはどのようなものがあって、マンションのどこを修繕していくのでしょうか。
外壁塗装の指定修繕項目
ひとことで外壁塗装といっても、ただ壁面に塗料を塗って終わりというものではありません。マンション建物の劣化具合などにもよりますが、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」では、外壁塗装において以下を指定修繕項目にしています。
大規模修繕では、塗料の耐用年数なども加味したうえで、具体的に必要な工事項目を決めていくことになります。
外壁塗装等
躯体コンクリート補修 | 外壁、屋根、床、手すり壁、軒天(上げ裏)、庇等(コンクリート、モルタル部分) |
外壁塗装(雨掛かり部分)塗替/除去・塗装 | 外壁、手すり壁等 |
外壁塗装(非雨掛かり部分)塗替/除去・塗装 | 外壁、手すり壁等 |
軒天塗装 塗替/除去・塗装 | 開放廊下・階段、バルコニー等の軒天(上げ裏)部分 |
タイル張補修 | 外壁・手すり壁等 |
シーリング 打替 | 外壁目地、建具周り、スリーブ周り、部材接合部等 |
鉄部塗装等
鉄部塗装 (雨掛かり部分)塗替 | (鋼製)開放廊下・階段、バルコニーの手すり (鋼製)屋上フェンス、設備機器、立て樋・支持金物、架台、避難ハッチ、マンホール蓋、隔て板枠、物干金物等 屋外鉄骨階段、自転車置場、遊具、フェンス |
鉄部塗装(非雨掛かり部分)塗替 | (鋼製)住戸玄関ドア (鋼製)共用部分ドア、メーターボックス扉、手すり、照明器具、設備機器、配電盤類、屋内消火栓箱等 |
非鉄部塗装 清掃 | (アルミ製・ステンレス製等) サッシ、面格子、ドア、手すり、避難ハッチ、換気口等 |
非鉄部塗装 塗替 | (ボード、樹脂、木製等) 隔て板・エアコンスリーブ・雨樋等 |
ゼネコンやマンションのデベロッパー大手企業も大規模修繕を請け負いますが、外壁塗装や外壁修繕を手掛けてきた工務店などが、自分たちの実績や技術を活かして大規模修繕に対応する場合もあります。
新築マンションの場合、すでにデベロッパーのグループ企業などに大規模修繕工事を依頼することが決まっている場合が多いのですが、これから大規模修繕を依頼する会社を探す場合は、その会社の外壁塗装の実績を参考するといいかもしれません。
マンションの外壁塗装工事の流れ
大規模修繕でほかの工事がある場合はこの限りではありませんが、外壁塗装工事がおこなわれる際に、どのような流れでなにをするか、整理しておきます。
施工会社や工事の規模によって若干の差異はありますが、おおよそ以下のような流れです。
- 下地調査
- 現場の確認および周知
- 足場の設置
- 高圧洗浄
- 下地処理
- 養生
- 外壁塗装下塗り・中塗り・上塗り
- 完了後の検査
- 解体前検査
- 足場解体
- 工事完了
弊社の場合は、上記工程のほかに居住者へのアンケートに基づいた手直しや、工事完了後のアフターケアが含まれます。
外壁塗装工事は塗料の臭いや外壁洗浄による影響などについて居住者だけでなく、近隣住民にも周知したうえで理解を得てから進めるのが基本です。
またマンション駐車場のクルマや自転車などに塗料がかからないよう、カバーで保護するなどの対応もしております。
マンションの外壁塗装工事にかかる期間の目安
マンションの規模や外壁の劣化状態によって期間が異なりますが、おおよその目安は以下のとおりです。
- 50戸未満のマンションの場合/2~3か月
- 50~100戸程度/3~6か月
- 100戸以上/6か月以上
大規模修繕のなかに組み込まれる外壁塗装の場合、ほかの作業との兼ね合いもありますし、外壁に割れやふくらみがあって外壁補修が必要になれば、さらに工事期間がかかることになります。
さらに外壁塗装の場合、天候に大きく左右されます。雨風や雪だけでなく、低気温や多湿気候も塗装とっては悪条件といえます。気象の影響だけでなく、その土地の気候風土によっても工事期間に違いが出る可能性があります。
外壁塗装工事の留意点
大規模修繕工事の重要項目でもある外壁塗装ですが、当社では以下のような点に留意しています。
臭いと人体への影響が少ない塗料を使用する
外壁塗装工事につきものなのは、塗料の臭いに関するトラブル。当社ではできるだけ臭いがしない、人体への影響が少ない塗料を使用するようにしています。それでもアレルギーや体質の問題などで影響が出てしまう場合もあります。
このような場合に備え、塗料に含まれる成分などを示した安全データシートを必ず用意しています。そしてその成分に対するアレルギーが発生した場合の対処法も、現場ですぐに調べられるような準備をしております。
マンション居住者様のご負担を軽くする
外壁塗装の工事をしている期間は、少なからず居住者のみなさまにご負担をかけることが出てしまいます。たとえば洗濯物を外に干せない、窓が開けられないといったことが挙げられます。
居住者のみなさまへのアンケートで寄せられる声にできるだけ対応できるよう、外壁塗装の作業に支障が出ない範囲で換気ができるようにするなど、工事中のご不便を軽減するように心がけております。
耐用年数が経過してしまった場合はどうすればいい?
先ほど塗料の耐用年数について触れましたが、一般に10年程度が目安とされています。さらに外壁材になにを使っているかによっても、耐用年数は異なります。建物診断をおこなわず放置するなどして、外壁塗装だけでなく外壁材の交換といった大掛かりな工事が必要になる場合も想定されます。
そこで、耐用年数が過ぎてしまった場合にどのような対応が必要か、整理しておきます。
目視で外壁がどの程度劣化しているかを確認する
外壁や壁材の劣化を経過年数だけでなく、目視で劣化状態を確認する目安には、以下のようなものがあります。
- 外壁材や塗装部にひび割れや剥がれなどが生じていないか
- 外壁が退色して色褪せたり部分的に元の色と違う色になっていたりしないか
- 外壁にカビなどが発生していないか
- 外壁の表面を触ると手に粉のようなものがつかないか(チョーキング現象)
- 外壁の塗装部が膨らんだような状態になっていないか
チョーキング現象は外壁塗装の劣化や不具合が想定できますが、単純に外壁にほこりなど汚れが付着しているだけというケースもあり得ます。
素人が目視で確認できる範囲には限りがありますので、少しでも劣化状態が疑われるときには、建物診断などを専門家に依頼するのが賢明です。
大規模修繕を待たずに塗料を塗り替える
大規模修繕工事をおこなうタイミングよりも前に外壁に問題が見つかったときは、そのまま放置せずに速やかに修繕工事をおこなうのが理想です。なぜなら外壁の劣化を放置すると、建物の防水機能が失われたり、壁材そのものにダメージを与えてしまったりするからです。
外壁材そのものを交換する
外壁材にひび割れやふくらみが見つかった場合は、外壁材自体を交換する必要があります。外から見て目立たないところであれば部分的な交換で済む可能性もありますが、マンションの景観に影響が出るような場所の場合は、マンション全体の壁材を交換しなければならない可能性もあります。
劣化した外壁を交換しないと外壁塗装ができません。当然、予算も工事日数もかかってしまいます。マンション竣工後に定期的に検査をするようにして、外壁材にまで影響が及ばないように対策することが重要です。
今回は、マンションの外壁塗装についてお伝えしてきました。これからもこのコラムでは、大規模修繕工事を知ることで、長年にわたって快適で住みやすい居住環境を維持していくことに繋がる情報をコラムとしてお届けしていきます。