マンション大規模修繕の要点と外壁洗浄、補修の重要性
外壁塗装に欠かせない外壁洗浄と外壁補修
マンションの大規模修繕において、外壁塗装、外壁洗浄、そして外壁補修は非常に重要な要素です。外壁塗装を行う際には、外壁洗浄が必須であり、劣化した部分を修繕する外壁補修が欠かせません。
外壁洗浄の必要性
外壁塗装の下準備として、まず行われるのが外壁洗浄です。洗浄を行わないと、外壁に付着した汚れや排気ガス、苔やカビが塗装の定着を妨げ、防水機能が十分に発揮されない原因になります。外壁塗装を行う前に外壁をきれいにすることで、塗料がしっかりと壁に密着し、長持ちする塗膜を形成できます。
特にマンションの外壁は、年月とともに土やほこり、排気ガス、鳥の糞、カビ、苔、塩分(海が近い地域の場合)などが積もり、見た目以上に汚れています。この汚れをしっかりと除去することで、外壁補修が必要な箇所も発見しやすくなりますし、修繕の精度も向上します。高圧水洗浄や薬品洗浄を使用して、外壁やバルコニーを徹底的に洗浄することが、工事全体の品質に直結します。
外壁補修の必要性
外壁補修は、外壁のひび割れやタイルの浮き・剥がれ、コンクリートの劣化などを修繕する作業です。特にタイルを使用しているマンションでは、接着剤が経年劣化することでタイルが浮き、剥がれてしまうことがあります。剥がれは落下や事故につながるため、定期的なチェックと補修が重要です。
コンクリートの場合もひび割れから雨水が内部に染み込み、鉄筋が錆びると「爆裂現象」が発生します。これにより、コンクリートが内部から押し出されるようにして外壁が破損してしまうこともあります。外壁補修では、こうした劣化部分をしっかりと補修し、コンクリート内部の鉄筋や鉄骨などの錆の進行を抑える処理を行い、建物全体の耐久性を高めることが重要です。
洗浄後に補修を行わなければ、見た目はきれいになっても外壁内部の劣化は進行してしまい、マンションの寿命を縮める結果となります。
外壁洗浄の方法と注意点
マンションの外壁洗浄には通常「高圧水洗浄」が採用されます。近年では、薬品の使用を極力避け、温水を用いた「超高圧水洗浄」が一般的です。この方法は、強力な水圧で汚れを落とすため、環境にも優しいというメリットがあります。また、タイルが使用されている外壁の場合は、高圧水洗浄だけではなく、薬品を使用して汚れを除去することが求められます。
ただし、薬品の使用には注意が必要で、タイルにダメージを与えないよう「試験洗い」を行ったうえで、最適な洗浄力を判断します。その後、薬品を塗布し、ブラッシングなどの工程を経て、仕上げとして高圧水で薬品を洗い流します。
外壁洗浄前に必要なこと
大規模修繕工事を始める前に工事の工程や作業内容などをしっかり周知して、いつからいつまでは外壁洗浄や補修、外壁塗装をおこなう予定であることを理解いただき、なるべく居住者に負担がかからないように配慮しながら、スムーズに工事を進めることが大事です。周知や告知に関しては、工事業者と管理組合が連携して、事前にチラシや張り紙などを用意いたします。外壁洗浄工事をおこなう際は、マンションの居住者の方にいくつか協力をお願いしなければならないことがあります。
バルコニーにあるものを片付けてもらう
外壁洗浄をする際は、バルコニーも洗浄の対象となります。したがってバルコニーに置いてあるものをすべて、室内に移動させるなどして、バルコニーを片付けてなにも置かれていない状態にしてもらう必要があります。
室外機など移動しようのないものは、カバーをするなどして洗浄水などの汚れが付着しないようにします。
窓やサッシの下に雑巾などを詰めて漏水対策をしてもらう
外壁洗浄では大量の水が流されるため、閉めてある窓でも下側から漏水してしまう可能性があります。
そのため居住者に協力をおねがいして、閉めた窓の下端から浸水しないように、窓の下側に雑巾などの布を詰めて水が入ってこないように対策してもらう必要があります。換気口からも水が入ってしまうことがあるので、換気口も閉めてもらうようにしてください。
マンションの外壁補修、洗浄工事の流れ
- 下地調査
- 現場の確認および周知
- 足場の設置
- 高圧洗浄
- 下地処理
- 養生
- 外壁塗装下塗り・中塗り・上塗り
- 完了後の検査
- 解体前検査
- 足場解体
- 工事完了
上記は外壁塗装の一般的な流れになります。(詳しくは外壁塗装のコラムへ)
外壁塗装と補修、洗浄にかかる費用
「長期修繕計画」は国土厚労省が提示している「長期修繕計画作成ガイドライン」に沿って作成することが推奨されています。このガイドラインでは、おもな修繕工事には19の項目があるとしています。その項目は以下のとおりです。
- 仮設工事
- 屋根防水
- 床防水
- 外壁塗装等
- 鉄部塗装等
- 建具・金物等
- 共用内部
- 給水設備
- 排水設備
- ガス設備
- 空調・換気設備
- 電灯設備等
- 情報・通信設備
- 消防用設備
- 昇降機設備
- 立体駐車場設備
- 外構・附帯施設
- 調査・診断・設計・工事監理等
- 長期修繕計画作成
このなかで「外壁塗装等」という項目がありますが、ここには外壁補修も含まれています。
国土交通省が調査した「長期修繕計画の修繕工事費の割合の内訳」では、「外壁塗装等」が全体の13.6%を占め、19の項目の中で工事費用の負担率が高いことがわかっています。
外壁補修や塗装は、大規模修繕工事のなかでも費用がかかる項目です。国土交通省の調査によれば、外壁塗装や補修にかかる費用は全体の約13.6%を占めており、これは大規模修繕工事の中でもっとも高額な部類に入ります。さらに、外壁タイルの補修も含めると、建築系工事全体の約4割が外壁関連の工事費に充てられることがわかっています。
引用元:国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン(令和6年6月改訂)
修繕費用の計算では、マンションの規模や築年数、使用されている外壁材の種類、大規模修繕の回数などによって変動しますが、国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると一般的な修繕費用は一戸あたり1回目の大規模修繕工事で100万円から125万円程度です。そのうち、外壁関連の工事費は約13万6000円が相場とされています。※費用は劣化具合や修繕間隔、修繕方法などにより異なります。
引用元:国土交通省「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」①マンション大規模修繕工事の工事内訳・工事金額
まとめ
今回は、マンション大規模修繕の「外壁補修と外壁洗浄」について解説してきました。
大規模修繕やマンション管理に関連する専門知識などを解説しながら、マンションの長寿命化につながる大規模修繕や改修の重要性などをわかりやすいコラムでお届けしてまいります。
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